夫婦別姓を選べない日本、どうして?(夫婦同氏制合憲判決を読み解く)
「最高裁判所の仕事と女性活躍」 櫻井(旧姓:藤井)龍子さん 2018.11.17
夫婦別姓は認められていない現在の日本ですが
先進各国は別姓が認められております。
元最高裁裁判所判事の櫻井龍子さんの講義を聞くことができました。
櫻井さんは、夫婦同氏制合憲判決の最高裁判事15名の内の1人でありました。
「夫婦同氏制合憲判決」とは?
婚姻の際、夫または妻の氏を称する。(民法750条)
これは平等原則に反してるのではないですか~?という主張。
最高裁の多数意見は、規定上夫の氏を名乗るとは書いてないので合憲である。
という判決でした。
15人のうち女性判事は全員(3名)違憲であると述べ
2人の男性判事も違憲との考えでした。
(15名の内10名が合憲、5名が違憲との判断)
違憲理由
→我が国の96%が夫の氏を名乗ることは実質的不平等であり、間接差別ではないか?
→先進各国では別姓を認めている。
セダウ(SEDAW:女性差別撤廃委員)の意見書などを添えたらしい。
櫻井さんは講義の中で、平等原則に反する意見述べられる中で
「性による意見の違いを感じた。」とおしゃってました。
どうして夫の氏を選ぶの?
婚姻の際、女性である私の氏を選択できたかといえば
当然に女性が男性の氏を称すると思っており
私の場合選択の余地はありませんでした。
選択することに考えが及ばなかったのです。
私が自分の氏を称したいと言ったところで、周囲が「えっ?どうして?」となったのではないかと思います。
それは、現実の不平等と力関係が作用しているからだと言えるのではないでしょうか。
増加する家族関係事件
裁判の数の傾向としては民事、刑事は2~3割減少する中で、家族法関係は増加傾向にあり、家庭裁判所で終わる事が多かったものが、最高裁まで持ち上がっているそうです。
背景として、家族法が70年を経て、家族慣の変化、家族構成の変化など実体と法がマッチしてない部分があるため。だと指摘されていました。
権利紛争の難しさ
また、雇用の場における女性差問題は均等法の整備のおかげで法に基づきすっきりした判断をされているように感じましたが、この夫婦同氏制合憲判決のお話しをされているときは、どこかスッキリしない、判断がまとめられず、これからも続くであろうことをどこか、憂慮さているように見受けられました。
この裁判にもし、女性の裁判官が半数だったら、同じような結果になっただろうか。と講義を聞きながら思いました。
法律、条文を違憲とできない日本
日本では個別的、具体的な事件を訴えることではじめて条文違反を問えます。
英米法では、個別事件がなくても法律、条令そのものを違憲とできるそうです。
日本は個別に事件として、持って行かないとどんなに良い結論を出したいと思っても出せない。裁判で結論をまとめないと、その法的効果が生じない。波及しないという事は、裁判所が身近でない私たち日本人にとって、法に魂を入れるにはどうすればいいのか?ということを考えさせられる一日でした。
櫻井龍子さんから受け取ったもの
櫻井さんは裁判長として、平成26年10月に降格同意したマタハラ訴訟関して最高裁が極めて重要な判断を下しました。
(妊娠を理由に軽作業を希望した女性が降格、復帰後も降格されたままの地位、地裁、高裁では違法性はないとの判断が最高裁で覆される。)
これは法改正とつながり、マタハラ防止対策を事業主の義務、明文化され、働きやすい職場が実現されたのではないでしょうか。
赤松良子さんが、
「当時育児休業法制定のために大汗をかいたのです。」と講師を紹介されました。
マタハラ訴訟の話では
「労働省時代に雇用の場で妊娠した女性がどれだけ弱い立場か知っていたので」と発言もされており、私はてっきりお子さんがいらっしゃる立場の方かと思っておりましたが
「私にはこどもはおりませんが、育児休業をとる親御さんや育てられている子どもたちが、私にとっては子どもや孫のように思えて嬉しくなる。」と。
人はここまで立派に慣れるのだと畏敬の念を抱きました。
先進各国からみると日本の女性地位に関して大きく後れをとってますが
ちょっとづつ、ちょっとづつ前進しているように感じます。
この裁判により、夫の氏を称するということが当たり前だと感じていた私も
ちょっとまてよ。と考えるきっかけになりました。
問題提議の重要性を感じます。問題意識を持った瞬間に自分でなければ誰がするのだ。というような気持ちで取り組まれたのではないでしょうか。
ちなみに、赤松先生は1953年に花見忠さんとご結婚されてますが、女性の氏
「赤松」の氏を選択されてます!!『志は高く』より(日本図書センター出版)